春夏の高校野球
不祥事で途中辞退する高校まで現れて、少し荒れ気味の夏の高校野球ですね。
それでも、開催時間の変更や延長ルールなど、ある意味「選手ファースト」な大会となり、安心して観戦出来るようになりました。
さて、個人的に春の選抜と夏の今大会、とても興味深い学校が出場しています。
それは春の選抜でのエナジックスポーツ学院(沖縄)そして今大会の弘前学院聖愛(青森)の2校です。
エナジックスポーツ学院は選抜の2回戦で敗退、弘前学院聖愛は今大会の1回戦で敗退しました。
甲子園において、そこまで優れた成績をおさめた訳ではありませんが、とても印象に残るプレーをしたチームでした。
それは、両校ともに「ノーサイン野球」を標榜し、実践しているというということです。
老将の呟き
エナジックスポーツの神谷監督(70歳)はこう話しています。
「セオリーは教えるけど、理由があればセオリーを無視しても構わないと選手たちには言っています」
瞬間、瞬間で勝負する野球で、サインはワンテンポ遅れてしまう、それより選手間でアイコンタクトでゲームを組み立てる方が楽しいだろうと。
1学年18人の少数精鋭、全寮制ということで細やかに生徒に目が行き届いていることがわかります。
とにかく実戦練習を多く行い、プレーが食い違えば練習を止め、反省と改善策を探すミーティングをとことんやるのだそうです。
ノーサインを本格導入して以降、とにかく話し合いの時間が増えたということです。
お互いの性格や野球の志向を理解するにはそれしかなく、相手を観察する力もつくとのこと。
神谷監督は何をしているのか?その答えは…
「ボーッと見てます」
野球をするのは子供たちで監督じゃないと言い切っておられます。
対話による主体性の伸長
弘前学院聖愛の原田監督(48歳)は、選手から「ノリさん」と呼ばれています。
ノリさんは、次にバッターボックスに立つバッターや、ベンチで準備をしている選手と徹底的に対話をするのだそうです。
「次にどうしたい?」と問い掛けて、「バンドしたい」と答えが返ってきたら「やってくれ」と。
違うと思えば意見はすることもあるそうですが、選手がそれにより、思考する数が圧倒的に増えたんだそうです。
思考と検証、そしてそれが主体性になる…甲子園に来るまでにノリさんと選手達は、どれほどそれを繰り返したのでしょうか。
甲子園は1回戦で敗退しましたが、実況中継の中で解説の方が「いやぁ…このチームの選手は野球をよく知っているな」と呟くシーンがありました。
「野球をよく知っている」
これは一般的には監督に向けて言われるコメントであり、選手に向けての賛辞としては珍しいのではないでしょうか。
少なくとも、指示が無いと動けない選手には、この賛辞が贈られることは無いような気がします。
考えて、動く
よく企業において「考えて、動ける人が欲しい」と言われます。
少し専門的な言い方をすれば「自走できる人が欲しい」ということでしょうか。
そんなに簡単なことではないということは分かっていると思いますが、それがどれくらい分かってくれているのか、いつも疑問に感じています。
おそらくノーサイン(指示無し)ということを耳にするだけで拒否感を隠せない監督さん、社長さんは大勢おられると思います。
それは、高校野球でも企業でも、組織は皆同じです。
勝手にやらせるとか、自由のやってよいとか、そういうものではありません。前述の原田監督もそのように仰っています。
両校ともに共通しているのは、徹底したミーティングによる相互理解、対話による思考と検証…ここなんです。
組織において動くと言うことは、相互理解の深度が鍵です。
「彼ならこう考えるのでは」「あいつならそこは大丈夫」「ヤツなら先回りしてやってくれるはず」
そういった理解が出来るまでの、ひとつひとつの積み重ねが重要なんだと思うのです。
相互理解の上に個々の積極的な思考が芽生えます。両校の選手は「野球が面白い」と屈託なく話しています。
縦社会の風習が根強く残っていると言われる高校野球において、こういった新しい風土が根付き始めたことをとても嬉しく感じています。
是非とも、企業にも参考にして欲しいノーサイン野球です。
最後に、こうしたことは時間が掛かることについて、原田監督がコメントされています。
「うちは、3年が抜けた後の秋の大会はすごく弱いです・笑」