全ての組織は1オン1の集合体

経営者は陥り易く、そして、抜け出しにくい

全ての組織は1オン1の集合体…先日のとあるセミナーでお話した内容の一節です。
あまりにも当たり前の話であり、それ故にサラッと流すように話したのですが、懇親会でお声がけを頂いた方から「ズバリと言われると目から鱗でした」と言われました。

そうです。
5人でも10人でも、20人30人、或いは50人や100人であっても、基本的に組織のコミュニケーションは1対1の対話の集合体です。

そのことについて、件の方とは随分と話し込みました。
そして「何故、経営者やリーダーはそれを忘れがちなのか?」ということについてもお話させて頂きました。

組織の長としての感覚や、然るべき視座がそういった当たり前の対人手段を忘れさせるのでしょうか? 

或いは経営者として、皆を支えないといけない意識が、逆に心理的な距離感を生んでしまうのでしょうか?

どちらにせよ、この当たり前を忘れてしまうと…厄介なことに、なかなか抜け出せないような気がします。

あの漫画のこと。

経営者と一般社員…というか平社員が、何のしがらみも無く、自然なコミュニケーションが取れている漫画があります。

ハマちゃんとスーさん、そういえば分かる方も多いでしょう、「釣りバカ日誌」です。

彼らは同じ会社の社長(後に会長)と平社員の立場でありながら、釣りの師匠(ハマちゃん)と弟子(スーさん)という逆転の立場で付き合います。

釣りにのめり込んだハマちゃんは、自社の社長の顔すらも知らなかったんですね。

そしてスーさんは温厚に見えて、実は鬼社長でした。

スーさんは社長であることを隠して、釣りの上手いハマちゃんに師事します。  

会社のしがらみの無い、気兼ねなく釣り勝負ができる関係はスーさんにとって、とても心地の良いものだったのです。 

スーさんは自身の立場をハマちゃんに隠そうとします。その関係性が壊れるのを恐れていたのです。

あることがきっかけで、スーさんは止む無く正体を明かします…自身が同じ会社の社長であることを。

ところが予想に反して、ハマちゃんの態度はこれまでと全く変わりませんでした。 

釣りは「公私の私」であり、会社では社長と平社員であっても、業務外では「釣り勝負のハマちゃんとスーさん」でいようじゃないかと言うのです。

質の高い関係性は1対1で揉まれる

お気楽な漫画と思いきや…この作品には会社経営の中で陥り易い、経営者の孤独や、本質的なコミュニケーションについて、実にフランクに描かれています。

スーさんが自身の正体について明かした時、「もう…こういう気兼ねのない、良い関係ではいられないだろう」と思ったのは間違いありません。

では、もし比較的、早い時期に正体を明かしていたら、どうなったのでしょうか? 

お気楽なハマちゃんのことだから、変わらない可能性もあると思います。 

しかし、さすがに委縮してしまったのかも知れませんよね。

そして、今後は釣り仲間としては付き合うのは難しくなる…そう考えたかもしれません。

万が一、釣り仲間として続いたとしても、何処かしら距離感を感じてしまう、そんな関係になったでしょう。

何故、ハマちゃんの態度は変わらなかったのでしょうか?

それは、本気の釣り勝負を繰り返し、1対1で腹を割って話すことで揉まれた、質の高い関係性が出来ていたからではないでしょうか?

今更、偉い人だと言われても、揺るがない程、想いのやり取りを繰り返してきたからではないでしょうか。

ここでポイントなのは、ハマちゃんの揺るぎない感覚を、スーさんが理解出来ていなかったことです。

やはり、経営者やリーダーは心的に距離があいてしまいがちなんですね…砕けた言い方をすると「自信が無い(無くなっていく)」のかも知れません。

立場は上なのに、孤独であり、距離感を感じてしまう。そして時間と共にそれは冷えていってしまう。 

いかがでしょう…身に覚えはありませんか?

1対1、つまり1オン1は全てのコミュニケーションのベースです。

スーさんの心情をなぞってみて頂くと、何処が岐路だったのかが見えてくると思います。

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